17.07.07

「校長室の窓」文庫

校長に着任して3か月が経ち、早いもので夏休みが近づいてきました。この間、医療福祉関係の小説を10冊ばかり読み漁りました。その中から学生の皆さんにも勧める本を今回は5冊紹介します。それぞれ出版社のホームページにある本の紹介を付しておきます。

 

1.恍惚の人(有吉佐和子/新潮文庫)

老いて永生きすることは幸福か? 日本の老人福祉政策はこれでよいのか? 誰もが迎える〈老い〉を直視し、様々な問題を投げかける。

 

2.廃用身(久坂部羊/幻冬舎文庫)

廃用身とは麻痺して動かず回復しない手足をいう。患者の同意の下、廃用身を次々と切断する医師漆原。告発するマスコミ。はたして漆原は悪魔か?『破裂』の久坂部羊の衝撃的な小説デビュー作。

 

3.万寿子さんの庭(黒野伸一/小学館文庫)

「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」 竹本京子、20歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子(ますこ)に出逢った。 万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも2人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。 半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。

 

4.還れぬ家(佐伯一麦/新潮文庫)

十代で捨てた家だった。姉も兄も寄りつかない家だった。老父は心臓病を患い、認知症が進む。老母は介護に疲弊していた。作家は妻とともに親を支えることになった。総合病院への入院も介護施設への入所も拒む父、世間体と因襲に縛られる母。父の死後、押し寄せた未曾有の震災。――作家は紡ぐ、ただ誠実に命の輪郭を紡ぎ出す。佐伯文学の結実を示す感動の傑作長編。毎日芸術賞受賞。

 

5.認知の母にキッスされ(ねじめ正一/中央公論新社)

認知症の母親を毎日、介護する息子。生きることのおかしみやユーモアが全編に溢れる、今までにはない新しい「介護小説」。

 

どれも本のリサイクルショップ(ネットでも)で安く入手できますが、今回ここで紹介する本は、図書室に「校長室の窓」文庫を設けて並べておきます。洒落じゃないけど私の「私蔵」が「死蔵」にならないように。

 

学校長 長谷川成樹